
少子高齢化やグローバル化の進展などにより、中小企業を取り巻く環境は厳しくなっています。
勘と経験に基づく経営に限界を感じている方もいるでしょう。適切な経営戦略を策定すると、限られた経営資源を効果的に活用できるようになり、市場での競争優位性を獲得しやすくなります。
本記事では、中小企業にとって経営戦略が重要な理由と経営戦略立案の流れ、代表的な3つの経営戦略、活用するべき3つのフレームワークを解説します。自社の成長につながる方針を定めたい方は参考にしてください。
経営戦略は、企業が中長期的な目標を達成するために、自社の資源をどのように配分し、どの市場でどのように優位なポジションを獲得するかを定めた方針です。
経営戦略を定めると、何のために、どこで、何をするかが明確になります。経営資源が限られる中小企業においては、選択と集中を後押しする経営戦略が競争優位を築く源泉になり得ます。社内に共通の目標ができるため、従業員が主体的になり、士気が向上する点もポイントです。一方で、経営戦略を定めないと、場当たり的な対応になることが少なくありません。市場の変化に柔軟に対応しながら、自社の成長を持続するため、経営戦略が必要といえるでしょう。
続いて、中小企業を対象に、経営戦略立案の基本的な流れを紹介します。
適切な経営戦略を立案するため、まずは自社の現状を分析し、経営課題を特定します。分析の切り口は、自社でコントロールできる内部環境と自社でコントロールできない外部環境です。それぞれの例を紹介します。
| 分析の切り口 | 概要 |
|---|---|
| 内部環境 | ・ヒト(従業員数・専門知識・定着率など) ・モノ(商品の品質・保有設備・ノウハウなど) ・カネ(売上高・利益率・キャッシュフローなど) ・情報(顧客データ・市場データ・情報共有の仕組みなど) ・ブランド(顧客満足度・リピート率・市場評価など) |
| 外部環境 | ・市場(ニーズ・成長性・顧客層など) ・競合(競合他社の数・強みと弱み・新規参入企業など) ・法律(法改正・業界規制など) ・社会(人口動態・都市開発・ライフスタイルなど) ・経済(景気動向・物価・金利など) |
内部環境の分析で自社の強みと弱み、外部環境の分析で市場に存在する機会と脅威を把握します。後ほど紹介するSWOT
分析や3C分析などのフレームワークを活用すると、抜けや漏れなく自社の現状を分析できるでしょう。
次に、経営課題の解決につながる目標を、測定可能な数値で設定します。重要目標達成指標を意味するKGI(Key Goal Indicator)と重要業績評価指標を意味するKPI(Key Performance Indicator)の関係性を理解しておくことが重要です。
KPIは、最終的な目標であるKGIを達成するために、業務などの進捗状況を評価する指標といえるでしょう。したがって、KPIはKGIから導き出します。
具体的なKGIとKPIの例は以下の通りです。
| 分類 | 指標 |
|---|---|
| KGI | 売上高・営業利益・会員数など |
| KPI | 商談数・成約率・問い合わせ数など |
施策により改善できるKPIを設定することもポイントです。
次に、設定した目標を達成するための経営戦略を策定します。詳しくは後述しますが、経営戦略の例は次の通りです。
たとえば、差別化戦略は、自社と競合の違いを明確にし、競争優位性を生み出す戦略です。自社の経営理念やビジョン、環境を踏まえて、最適な経営戦略を選択しましょう。
経営戦略を実行に移してから、月に1回あるいは四半期に1回程度のペースでKPIを確認し、計画とのずれが生じている場合は施策の修正を検討します。
PDCAサイクルを継続的に回して、精度を高めていくことが成功のポイントです。半期に1回あるいは1年に1回程度のペースで、自社の環境を分析し、現在の経営戦略の妥当性を評価することも欠かせません。内部環境や外部環境が大きく変わった場合は、経営戦略の抜本的な見直しを迫られることもあります。
中小企業に適した主な経営戦略として、以下の3つが挙げられます。
ここでは、それぞれの特徴と導入時に注意したいポイントを紹介します。
競合他社よりコストを抑えて競争優位性を確保する戦略です。
以下の方法でコストを抑えられます。
コストリーダーシップ戦略では、これらの取り組みにより、次の状態を目指します。
ただし、競合他社が追随すると、価格競争に巻き込まれる恐れがあります。また、コストを削減するため、大量生産や大量販売が必要になると、大企業に対抗できません。
特定の顧客層や地域、商品などに、自社の経営資源を集めて競争優位性を確保する戦略です。
具体例として、以下のケースが挙げられます。
集中戦略は、特定の市場を対象にコストを抑えて優位性を確保するコスト集中戦略と特定の市場を対象に差別化で優位性を確保する差別化集中戦略にわかれます。いずれも市場を絞り込むことで、限られた経営資源を有効活用できます。
ただし、対象を限定するため、相対的に市場規模は小さくなります。
他社の商品にはない独自の価値を打ち出し、競争優位性を確保する戦略です。独自の価値の例として以下のものが挙げられます。
差別化に成功すると、価格競争に巻き込まれにくくなり、市場で一定のポジションを獲得できます。ただし、独自の価値を提供するためコストがかかることや独自の価値を模倣されることがあります。また、市場に独自性を浸透させるため、マーケティング活動が欠かせません。

適切な経営戦略を選択するために、自社の環境を分析する必要があります。ここでは、分析に利用できる主なフレームワークを紹介します。
自社の内部環境と外部環境を以下の軸で整理するフレームワークです。
| 環境 | 項目 |
|---|---|
| 内部環境 | ・Strengths (強み=自社の強み) ・Weaknesses (弱み=自社の弱み) |
| 外部環境 | ・Opportunities (機会=プラスに働く市場や社会の変化) ・Threats (脅威=マイナスに働く市場や社会の変化) |
これらを分析することで、自社が置かれている状況を客観的に把握できます。
また、クロスSWOT分析により「強みと機会」「強みと脅威」「弱みと機会」「弱みと脅威」を掛け合わせると、適切な経営戦略を評価しやすくなります。たとえば、ビジネスの追い風になる法改正に向けて、経営資源を集めるなどが考えられます。
以下の3つの「C」から事業環境を分析するフレームワークです。
顧客や競合の動向を踏まえながら、自社がとるべき経営戦略を検討できます。たとえば、顧客のニーズと競合他社の弱み、自社の強みを照らし合わせると、自社が対応できて、競合他社が対応できない顧客のニーズを見つけられます。差別化戦略を立案する際に活用されることが多いフレームワークです。
自社の事業を分析し、経営資源の配分を最適化するフレームワークです。PPM
分析では、市場成長率と市場占有率を軸に、自社の事業を以下の4つに分類します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 花形 | 市場成長率・市場占有率とも高い事業。 継続的な投資が必要 |
| 金のなる木 | 市場成長率は低く、市場占有率が高い事業。安定した利益を期待できる |
| 問題児 | 市場成長率は高いものの、市場占有率が低い事業。花形になる可能性があるため、投資継続か縮小・撤退の判断が必要 |
| 負け犬 | 市場成長率・市場占有率とも低い事業。縮小か撤退を検討する |
PPM分析を活用すると、金のなる木で得た利益を花形に投資するなどの経営判断を行えます。
ただし、市場成長率と市場占有率の2軸で評価するため、多角的に分析したい場合はSWOT分析や3C分析の併用が求められます。
経営戦略は、限られた経営資源を適切に配分し、競争優位性を確保するための方針です。経営戦略を策定すると、市場環境の変化に柔軟に対応しやすくなります。ヒト・モノ・カネが限られる中小企業にとって、持続的な成長を支える重要な戦略といえるでしょう。具体的な経営戦略として、コストリーダーシップ戦略や集中戦略、差別化戦略が挙げられます。
SWOT分析や3C分析などを活用し、自社の環境に適した戦略を採用することが重要です。
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