成果を急ぎすぎる社長が陥る罠 | 中小ベンチャー企業の経営コンサルティング・スクール|ブレインマークス
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2026/05/14

成果を急ぎすぎる社長が陥る罠

先日、こんなご相談をいただきました。

「創業から15年、必死でチャレンジを重ねて、売上8億円・従業員20名ほどの会社になりました。ただ、『ここ5年間は、私も社員も会社も全く成長していない』と感じます。業績は微増どまり、営業社員の短期離職が多発し、仕掛けていたプロジェクトも停滞…これでは、私が目指す”売上100億円の会社”には程遠い状態です」

「その焦りから、マーケティング関連のセミナー受講や営業支援の検討など、新たな挑戦を増やしています。ただ、『何か間違っているのではないか?』という気持ちもあります。この状況、安東さんはどう思われますか?」

『100億円企業を目指す』のような経営者の強い意思は、組織の推進力になります。ただ、ご相談内容から私なりに分析すると、ご相談者様は業績思考が強すぎる傾向があるかもしれません。

もちろん、真剣に業績を追う姿勢は経営に欠かせないものですが…過度な業績思考は時として、経営に思わぬ罠をもたらすことがあるのです。

業績思考の光と影

強い業績思考は、経営にプラスの影響を与える『光』と、マイナスの影響を与える『影』、両方の側面をもちます。それぞれについて、掘り下げて考えてみましょう。

まず業績思考の『光』は、経営者に強いドライブ力をもたらすことです。

高い業績目標を掲げる経営者は、総じてとても華やかです。目標に向けて自分を奮い立たせる力があり、アイデアや行動力にも秀でている。モチベーションも高いため、周りが自然に引き込まれやすいのも特徴です。

創業初期から「日本一の自動車メーカーになる」と宣言したという本田宗一郎氏や、「豆腐屋のように1兆2兆の商売をしよう」と語った孫正義氏をイメージすると分かりやすいですね。強い野心は、経営にとっても強い原動力になるというわけです。

しかし、光が強ければそれだけ影も濃くなるもの。その影に気づかず放置することこそが、経営者の足を掬う『罠』となります。

見落とされがちな影

過度な業績思考がもたらす『影』の代表例には、「まだまだ成長不足」という社長の焦りが組織に伝播し、社員を疲弊させてしまうことがあります。

自らを駆り立てるあまり、社員が息切れを起こしていても意に介さない。高すぎる目標に向けて「達成できていない」「もっと頑張れ」と急き立てる…このように、社員への配慮が欠けがちになることも、見過ごせない『影』の一つです。

また、成果を急ぐあまり、商品やサービスの質が置き去りになるケースも少なくありません。例えば、人の育成が追い付かないまま現場に出し、結果クレームが発生しても「そのくらい当然」と片付けてしまうなどです。

私は実際に、こうした経営者を何度も目にしてきました。敢えて言葉を選ばずに言うならば、これは「社員に対しても、顧客に対しても不誠実な状態」といえます。

経営者一人の頑張りで出せる成果は、どこかで頭打ちになります。社長の夢に社員もコミットできる仕組みがなければ、組織はいずれ停滞に陥る。そして、その原因を「組織構造」ではなく「社員」に見て苛立つことで、余計に社員との距離が開き、組織が止まっていく。これが、過度に成果を急ぐ経営者が陥る『罠』の典型例です。

社員の立場で考える

この罠から抜け出すためには、「社員の立場で考える」ことが大切です。

まず、『100億企業』のような夢への道のりを、「一直線に向かう」イメージから「階段のように、段階的に上っていく」イメージで捉え直しましょう。その上で、どうすれば社員が自ら進んで階段を上ってくれるかを考えます。

達成感を感じられない状況で「もっと頑張れ」と急かされ続ければ、どんなに優秀な社員も遅かれ早かれ疲弊してしまいます。社員に達成感を得てもらい、モチベーションを保つために何が必要か。どう育成すれば、成果を出すための力をつけられるか…精神論に頼らず、実現可能な方法を模索する姿勢が必要です。

そして最も重要なのは、自社の事業の意義や価値を社員に共有すること。そして自社の理念や価値観を今一度見つめなおし、経営者自らが率先して体現していくことです。

売上第一の姿勢のまま理念を唱えても、社員からは「売上のためのお題目」に見えてしまいます。会社が成長し、100億円企業となったその先で、顧客や社会にどんな価値を届けたいのか。そのためには、社員にどう向き合うべきなのか。その原点に、今一度立ち返ってみてください。

本日の結論

強い組織は、一朝一夕ではつくれません。持続的な成長も、小さな取り組みを地道に積み重ね続けるからこそ実現します。

焦りを手放し、スピードを緩めて原点に立ち返ること。顧客に対しても、同じ目的に向かって共に歩む社員に対しても真剣に向き合うこと。遠回りに見えても、それこそが社長の夢を“社員と共に向かう未来”へと変える鍵になるはずです。

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