
今回のテーマは、「ビジネスの競争に対する勘違い」です。
先日、クライアントの方から「地域でスポーツジムを経営しています。人口20万人程度の地方都市ですが、最近同じ地域に大手の格安ジムが進出してきました。私たちには、地域に根付いて20年以上の実績があります。大手には負けたくないと思い、宣伝広告に力を入れていますが、顧客を奪われる気がしてなりません。何かライバルに勝つ方法はないでしょうか」というご相談をいただきました。
ジムの経営に限らず、ビジネスは常に競争にさらされていますよね。お客様から選ばれる方法を考えることは、経営者にとって大きなテーマです。正しい戦略を練っていくためにも、今回は競争に対する誤解と正しい認識についてお伝えしていきます。
経営者が抱きがちな誤解のひとつが、「常にNo.1を目指さなければならない」というものです。
多くの業界で広告や名刺に「シェアNo.1」「地域No.1」と掲げるのもその一例でしょう。大手企業は市場のシェアを奪い合うことが宿命ですが、その価値観が今や代理店や中小企業にまで持ち込まれてしまっています。しかし、このブログを読んでくださっているあなたには、そのNo.1争いに巻き込まれてほしくないのです。
No.1を目指す争いは、「勝者は1人である」という発想から来ています。
ビジネスをスポーツに例える経営者も多いですが、それは本当に正しい例えでしょうか。スポーツにおいては、No.1だけが勝者で、周りは敗者です。もしビジネスが同じ構造なら、ある地域では1社だけが勝者で、他はすべて敗者ということになります。しかし実際には、どの会社もお客様がいて、ビジネスとして成り立っています。
つまり、ビジネスにおいては勝者が1人ではないのです。
ビジネスの競争は、芸能や芸術に近い世界です。
芸能・芸術の世界には、勝者が1人に限られることはありません。例えば、「ピカソとゴッホはどちらが一番なのか」「ユーミンとサザンはどちらが上なのか」と、比べる人はあまりいないでしょう。どちらも唯一無二の存在で、それぞれに根強いファンがいます。
同じように、私たちはニトリにも行くし、イケアにも行く。マクドナルドにも行くし、モスバーガーにも行く。「私はモスが好き」「僕はマックだけ通う」など、一人ひとりが好みや気分に合わせて行く場所を選んでいます。売上規模で見れば、マクドナルドはモスバーガーの10倍ですが、どちらの会社にも根強いファンが存在します。
つまり、重要なのは勝ち負けではなく独自性なのです。独自のニーズや嗜好性を持ったファンにとってのNo.1になること。それが芸能・芸術だけでなく、ビジネスでの考え方の基本です。
それぞれの会社が独自のニーズを持つ顧客に対して独自の価値を提供することで、勝者が複数生まれます。相談者さんのようにジムの経営においても、独自性を出すことはできるはずです。通ってくれる顧客を観察し、ニーズを捉えていきましょう。
性別は男性が多いのか、女性が多いのか。
目的はダイエットなのか、筋肉をつけたいのか。
20代なのか、50代なのか。
私の実家のある地域では、お風呂のない住宅に住んでいて、お風呂に浸かるために毎日ジムを利用するという方もいらっしゃいました。銭湯に通うよりもジムの月会費の方が安いというのが、大きな理由だそうです。
大切なのは、そういった一見ニッチに見えるニーズに対して、ライバル会社にはできない方法で応え続けていくことです。その積み重ねが、会社の独自性と長期的な価値を生み出し、唯一無二のブランドへと成長させていくのです。
同業他社と顧客を奪い合うのではなく、独自のニーズを持つ顧客にファンになってもらう。その人たちに徹底的に価値提供していけば、大手が参入してきても不安に振り回されず、自信を持って事業を続けられます。ぜひ、あなたの会社独自のマーケットを見つけてみてくださいね。