
今回のテーマは「組織改革の勘所とは」です。
先日、クライアントの方から「スタッフ20名の歯科医院を経営しています。組織づくりの大切さを実感し、これまで色々なコンサルタントの支援を受けましたがしっくりきません。現在、組織改革に着手していますがうまくいかず困っています。スタッフとの対話を増やせば文句が出る。人事評価制度を導入すれば、反発が出る。残業を減らす取り組みも、給料が減るからと不満そうです。組織改革の勘所があれば教えてください」というご相談をいただきました。
このスタッフの反応は、経営者にとっては本当に悲しいものです。「会社をよくしたい」と思って始めた改革が、かえって反発を生んでしまう。この状況に葛藤する経営者の方は少なくありません。たしかに、組織改革のためには人事評価や1on1の導入も大切です。しかし、まず意識すべきは“どこにフォーカスするか”です。今回は、組織改革を進めるうえで押さえておきたいポイントをご紹介します。
結論からお伝えすると、大切なのは「組織は数の理論で動いている」と知ることです。つまり、組織を動かすのは“多数派”であると理解しておく必要があります。どんなに優れたプランでも、多数派の支持が得られなければ実現しません。だからこそ、経営者は「数の理論で勝つ」視点を持つことが重要です。
まず、社員を3つに分類して考えてみましょう。
①協力的な人材
②非協力的な人材
③どちらでもない(どちらにも転ぶ)人材
この3種類の人材それぞれに、どう働きかけるかがポイントです。
最初に行なうのは、「協力的な人材」を味方につけることです。賛同してもらうだけでなく「どちらでもない人材」へも働きかけてもらいましょう。同時に、経営者自身も「どちらでもない人材」の声に耳を傾けます。不満や課題を拾い上げ、改善を重ねることで中立だった社員は少しずつ協力的な立場へと変化していきます。協力的な人材を増やす最大のポイントは、社員が社内で活躍できる場をつくることです。「自分は求められている」と思えると、社員は会社にコミットします。そのために、経営者は社員一人ひとりの得意分野を見極め、力を発揮できる役割を任せていきましょう。
次に行なうのは、「非協力的な人材」と「どちらでもない人材」を切り離すことです。たとえばチームのリーダーが非協力的で、部下が中立的なタイプなら、遅かれ早かれ全員が非協力的になるリスクがあります。そうした場合は、リーダーを個人プレイヤーとして別の業務に配置するなど、「非協力的な人材」の影響が周囲に及ばない環境を整えましょう。
一方で、「非協力的な人材」にも少しずつ働きかけることが大切です。話を聞いてみると、「売上ばかり優先してスタッフの話を聞けていなかった」「小さな誤解を放置して関係がこじれた」「子育て中のスタッフへの時間の配慮が足りなかった」など、会社側の課題が見えてくることがあります。経営者が「もっと社員を理解したい」「頑張りを認めたい」と感じられれば、それが1on1や人事評価制度といった仕組みづくりの出発点になります。
組織改革の本来の目的は、会社に「協力的な人材」を増やすことです。この視点を持たず、1on1や人事評価制度を導入すること自体を目的にしてしまうと、改革はうまくいきません。重要なのは、勘所をつかむことです。どうすれば社員が会社のファンになり、自ら動きたくなるのか。その本質を考えることが大切です。
「非協力的な人材」の中でも、全く歩み寄りが見られない人とは徹底的に話し合うしかありません。協力をしなくてもいいから、まずは“邪魔をしない状態”に持っていくのです。最終的に目指すのは、「協力的な人材」が全体の8割を占める状態です。残る2割は会社を去るか、自ら変わっていくかを選ぶことになる。それが、私たちの目指す組織改革の姿です。
組織改革の要は、「数の理論」を理解し、味方を増やすことです。8割の社員を会社のファンに変え、未来にも希望を感じてもらえれば、組織改革は自然と加速していきます。その第一歩として、社員を3つのタイプに分けることから始めてみてください。きっと、新しい発見があるはずですよ。