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2022.02.08

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中小企業と人権問題(第1回) 〜「良い商品を安くつくる」だけでは通用しない時代

安東 邦彦

人権問題は「対岸の火事」ではない

新型コロナ関連の話題が続く中で報道は散発的になりがちでしたが、2021年は大きなトピックとして、「企業の人権問題への対応」が注視されました。

その代表例と言えるのが中国・新疆ウイグル自治区を巡る人権問題です。

4月には、フランスの非政府組織(NGO)が新疆ウイグル自治区での人権問題に関連して、「強制労働」や「人道に対する罪の隠匿」の疑いで、日本やスペインなどの大手アパレルメーカー4社を告発。

「人権を無視して生産された原材料を使用する企業の製品を買うべきではない」という動きが世界的に広がっています。

もちろん、事実関係に対する企業側の主張もあるでしょう。そうした動きや反応を含めて、新疆ウイグル自治区の人権問題への関心が高まるとともに、大企業の経営姿勢もまた注目されているのは事実です。

こうした問題について、中小企業の経営者はどう向き合うべきでしょうか。

「あれは大企業の話、うちのような会社には関係ない」と考える経営者も多いかもしれません。しかし私は、すでに対岸の火事では済まなくなっていると感じます。

モノの流れのグローバル化が加速する中で、日本の中小企業が知らず識らずのうちに、フェアトレードを阻害している可能性もあると思うのです。

「環境保護を意識している企業としか付き合わない」パタゴニア

この問題について考えるときに思い出すのが、アメリカのアウトドアブランド「パタゴニア」です。

同社は以前から環境に配慮した製品づくりと商品展開で知られています。私は今から5年ほど前に、カリフォルニア州にあるパタゴニア本社を訪れる機会がありました。

そこで聞かされたのは「製品づくりにおいては、仕入先まで徹底的に調査する」という同社の基本姿勢。

もし、原材料の仕入先が自然破壊につながる行為をしていたら、その原材料を使用するパタゴニアも、結果として自然破壊に加担していることになってしまいます。

そのため同社は取引先の選定に厳格な基準を設け、環境保護を意識している企業としか付き合いません。

もし、取引開始後に問題が発覚した場合は改善指導を行ない、それでも改善が見られなければ取引を停止する――。そんな姿勢を堅持する企業ですから、関連する中小企業としても意識を変えざるを得ないでしょう。

従来の中小企業経営者の感覚でいえば、そうしたポリシーは「大企業の独善ではないか」と映るかもしれません。大企業の基本体力とリソースがあるから綺麗事を言えるのではないかと。

しかし、答えは市場にあります。環境配慮の姿勢を崩さないパタゴニアだからこそ、多くのファンに愛され、また多くの投資家から支持を集めているのです。

そのやり方で、本当にファンは付いてくるのか

短期的な経済面でのメリットだけを考えれば、新疆ウイグル自治区を巡る対応で問題視されている企業のようなことが起きるのかもしれません。

原価は安ければ安いほうがいい。それで良い商品を送り出せるなら問題はない。

目の前の数字だけを見ていれば、そう思うのも無理はありませんよね。

しかし今は、企業のアイデンティティそのものが問われる時代です。人権問題でも環境問題でも、細部に至るまで配慮できない企業は、いずれ市場から淘汰されてしまうかもしれないのです。

もしかすると一部の大企業は、そうしたリスクを織り込みつつも、「良い商品を安くつくる」という他社との差別化ポイントを優先してきたのかもしれません。それが自社のファンにとっては必要なのだと。

しかしその考え方は、最も大切なポイントを見逃しています。人権や環境に配慮できない企業は、自社の「最もコアなファン」から見限られてしまう可能性もあるということを忘れないでください。

(安東邦彦/第2回に続きます)

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