今回は、書籍「自主経営組織のはじめ方」を中小企業の経営に活かす方法をご紹介します。
著者はアストリッド・フェルメールとベン・ウェンティング。アストリッドは書籍「ティール組織」で最も多く紹介された、オランダ最大の訪問看護組織の経営に携わっている人物です。一方、ベンは組織変革の専門家として、個人やチームが自らの仕事に責任を持つ仕組みづくりを指導しています。
この本には、社員が自ら意思決定できるチームをどうつくるか、その具体策が示されています。ティール組織というと理想論に聞こえがちですが、読んでみると「うちでも工夫次第でできるかもしれない」と感じられる実践的な内容です。そこで今回は、中小企業でも応用できるポイントをピックアップして解説していきます。
ティール組織とは、長期的な安定と成長を実現するための新しい組織のあり方です。従来のように強い権限をもつリーダーは存在せず、現場で意思決定が行なわれます。メンバー同士はフラットな関係にあり、「組織は全員のものである」という考え方が基盤にあります。この組織が成り立つのは、各々の自主経営があってこそ。セルフマネジメントによって、ティール組織を支える根幹になっています。
そもそも「自主経営」はどのように生まれたのでしょうか。アストリッドが経営に携わる組織には、優秀な看護師が多数在籍していました。しかし当時は、上からの指示を待たなければならず、現場で本当に必要なサービスを十分に提供できないという課題を抱えていたのです。
そこでアストリッドは、業務の基本ルールを定め、一人ひとりの看護師が現場で力を発揮できる環境づくりに取り組みました。しかし、現場の人々が自ら考え意思決定する過程では、不安や失敗が生じる事もあります。だからこそマネジャーは、指示を出す存在からファシリテーターへと役割を変える必要があります。チーム内で目的を共有・合意し、どうすれば達成に近づけるのかをメンバーと話し合うのです。さらに必要に応じてコーチが入り、質問への助言や進め方の整理を行なうことで、現場の意思決定を後押ししていきます。
このようなプロセスを経ることで、「最高の成果をクライアントに届ける」という自主経営の本来の目的が実現されるのです。もちろん、このファシリテーションは最初は手間がかかります。しかし各々が自分で意思決定し物事を進めるため、結果的に効率が向上します。チーム内での話し合いを通じて、互いに新しいやり方や考え方を学び、意思決定のスピードも高まっていくのです。
自主経営の導入には、次のようなメリットがあります。
自分の仕事に対して権限を持つことで主体的に動けて、やりがいを実感できます。
現場が直接意見を聞き取るため、顧客は「自分の要望が反映されている」と感じやすくなります。
監視や管理の業務が不要になり、コストを抑えることができます。
合意形成が前提になるため、「できない」「しんどい」といったケアに時間を割かずに済みます。
業務の全体像が見えやすくなり、複雑な規則を細かく設ける必要がなくなります。
ただし、いくつかの課題も存在します。マネジャーには指示型ではなくファシリテーター型の育成が求められますし、チーム全員に自主経営を成り立たせるための教育(協調性など)も欠かせません。ハードルは決して低くはありませんが、少しずつ取り入れていくことで、確かな成果に繋がっていきます。
チームを編成する際には、「人の意見を否定しない」「意見を膨らませる」「学びを続ける」といったルールを明文化しておくことが大切です。そして目標には期限を設け、そこまでやり抜く姿勢を徹底します。
さらに、課題解決のためのフレームワークも明文化します。「解決策を考える→問題を分析する→今後明確にすべき要因を考える」。この流れを全員で共有することで、共通の考え方をもち、同じ方向へ進めるチームに成長していけるのです。
弊社でも、ティール組織を目指して少しずつ取り組みを進めています。現時点では5割ほどの実現度ですが、確実に前進しています。この本を読んで、ぜひ皆さんも「自分たちらしい自主経営組織とは何か?」を考えてみてくださいね。