今回のテーマは、「ビジョンを描くゆとりがない」です。先日、クライアントの方から「ブレインマークスさんのYouTubeを拝見していて、ビジョンの大切さを痛感しています。ただ、うちの会社の場合は、人が定着せず、常に人手不足です。日々の仕事に追われ、未来を考える余裕がありません。近年の人手不足で人の採用ができず、応募も来ない状況です。ビジョンの大切さは分かったのですが、ビジョンをうまく描けません。目の前の課題解決に必死です。このような場合、何から始めれば良いでしょうか」というご相談をいただきました。
これは相談者の方だけではなく、多くの経営者が悩む問題です。私自身も同じような経験を何度もしました。今回は、「なぜビジョンを描く必要があるのか」「描くことで何が変わるのか」について整理していきます。
ビジョンを描くのは、実は経営者自身のためです。「どこに向かうのか」を言葉にしておかないと、日々の情報や周りの声に振り回されてしまいます。
でも、イメージできたことは、実現する確率がぐっと高くなります。だからこそ、「自分自身が将来どうなりたいのか」「会社にどうなってほしいのか」。まずは言語化してみることが重要です。言葉に起こすと、頭の中が整理されます。経営者自身が楽になり、ブレることが減っていきます。とにかく大切なのは、「自分のために自由に未来を描く」という姿勢です。
私たち経営者の仕事は、「問題解決」です。
問題解決には、目の前の火消しをする「発生型」と、未来を見据えて動く「設定型」があります。発生型は今すぐ対処しないと被害が広がる問題。一方、設定型は「今すぐ困るわけではないけれど、数年後に理想の会社に近づくためにやること」です。経営者はこの2つを行き来しながら、トラブル対応と未来づくりの両方に日々取り組んでいます。
たとえば、「離職が多い」という悩みがあるとします。この原因を丁寧に見ていくと、「人間関係」「給与」「会社の雰囲気」「労働環境」などの要因に分解できます。その一つひとつに対策を立て、改善に繋げていく。それが、設定型の問題解決です。
すぐに0点から100点になるわけではありません。「施策を変える」「社員に働きかける」「コアバリューをつくる」など試行錯誤が必要です。時間はかかりますが、じっくりと取り組んでいけば、確実に70点には近づいていきます。設定型の問題を増やすことが、発生型の問題を減らす一番の近道です。
設定型の問題に取り組むためには、ビジョンの存在が欠かせません。理想の会社に近づくためには、まず経営者自身が「どんな未来をつくりたいのか」を描く必要があります。ビジョンを言葉にすることで、やるべきことが見えてきます。そこから計画を立てて、行動に落とし込んでいく。その積み重ねが、結果として発生型の問題を減らし、社長自身のゆとりを生み出してくれるのです。
もちろん、思い描いた未来がすぐに形になるわけではありません。だからこそ、長期的視点で見ることが大切です。将来こうなりたいという理想を持ち、日々の判断を「設定型の視点」で考えるように意識してみてください。すると、経営者のブレがなくなり、本来やるべきことに全てのエネルギーを注げるようになります。
目の前の火消しに追われ続けないためにも、まずは未来を描くこと。そして、その未来を現実にするための行動を、経営者自身が本気でやることが重要なのです。こうして、ビジョンを描き、計画し、行動を積み重ねることで、会社は確実に変わっていきます。
今回は、ビジョンを会社経営の重要なツールとして捉え直すきっかけになればと思い、お話しさせていただきました。
たとえば、相談者の方の「応募が来ない」というお悩みも「どうすれば応募が来る会社になれるか」と考えることで、設定型の問題に変えることができます。すぐに成果が出るとは限りませんが、数年かけて分析し、改善を重ねていけば、きっと良い方向に進んでいきます。
その土台となるのが、ビジョンです。まずは、未来を描くことから始めてみてください。あなたの会社が、より良く変わっていくことを応援しています。