
今回のテーマは「経営者はわがままでいい」です。
先日、クライアントから「経営者の在り方について迷っています」とご相談をいただきました。
「これまで会社を成長させるため、とにかく利益重視の経営をしてきました。利益のためにやりたくない事業も手掛けたり、自分とは違う意見にも耳を傾けたり…経営者として、好き嫌いより利益を追求することが責務だと思っていたからです。
しかし最近、本当にこれでいいのだろうかと感じます。経営が楽しくないですし、この先に何があるのだろうとも考えてしまいます。安東さんはどう思われますか」
これは、ご相談者様が真剣に会社の発展に向き合っておられるからこその悩みだと思います。その上で、私は「経営者は、もっとわがままでいい」とお伝えしたい。今回はその理由について、私の考えをお伝えします。
もちろん、利益を追求する姿勢は経営者として非常にまっとうです。お金がなければ組織は成り立たず、社員を守ることもできませんから…。しかし、一定の利益が確保できているならば、経営者は自分に正直になり、やりたいことをわがままに追求してもいい。むしろ、そうしないと経営がうまくいかない側面もあると私は思います。
なぜなら、やりたくないことは総じて長続きしないため。さらには息切れ状態や、いわゆる「燃え尽き症候群」にも陥りやすくなるからです。私がこれまでに接してきた経営者の皆さんも、本音を抑え込んでいる方ほど経営に迷いや苦しみを抱えている傾向がありました。
経営者が本当に「やりたい」と思えることならば、ピンチの時にも「自分が決めたことだから」と踏ん張ることができます。自分が納得して選んだ道だからこそ、覚悟をもって進める。経営者が自分のわがまま、本音を貫くことは、経営の力強さを高め、会社を成長させることにつながっていくのです。
ここで注意したいのは、「わがまま」と「自分勝手」は違うということです。
お伝えしてきた通り、経営者の「こうしたい」というわがままは組織の力につながります。ただし、やりたいことを実行に移す際は、社員に対して理由や意図をしっかりと説明することが重要です。社員に何の説明もなく、ただ自分勝手に「やれ」と命じるだけでは、組織は実行力を発揮できません。
例えば「会社の未来と現状を考えて、これが最善と判断した」「違うやり方もあるかもしれないが、自社にはこの方法が合うと信じている」「だから、一緒に挑戦してほしい」など……経営者がその道を選びたい理由を丁寧に説明し、一緒に歩んでもらうための合意形成に努めてみてください。
経営者は「わがまま」でよいが、わがままを通すためには「自分勝手」であってはならない。個人ではなく組織としてやりたいことに取り組む以上は、しっかりと説明責任を果たして社員の理解を得る必要があるのです。
ただし、説明してもすべての社員が賛同してくれるとは限りません。中には反発を示す社員も出てくるでしょう。しかし、これはある程度自然なことでもあります。社員の立場からは、「夢物語のようで不安」「具体的な成果が出ないと納得できない」と感じる人も少なくないからです。
反発に対しては、無理に説得しようとせず「そのような考え方もある」とフラットに捉えると、経営者の負担が少なく済みます。そして、ここでは反発する社員よりも「経営者のやりたいことを理解し、共に進もうとしてくれる社員」の存在に目を向けてみてください。
全員ではなくとも賛同してくれる社員がいれば、それだけ経営者も意思を貫きやすくなります。「これでいいのか」という迷いが和らぎ、経営に覚悟をもって臨む力が増してくる。共に進んでくれる社員の存在が、経営者の大きな支えになるのです。
経営者が本気で挑戦する姿を見るにつれ、初めは反発していた社員も理解を深め、やがて賛同に転じる――そんな変化が起きることも少なくありません。
ご相談者様の今の悩みは、競合他社の中でしっかりと利益を追い、成長を実現していく技術をお持ちだからこそ出てきたものだと思います。つまり、今は経営をさらにレベルアップさせるための準備期間なのではないでしょうか。
ぜひ、より上のステージを目指すための取り組みとして、ご自身がやりたいことに対してわがままに向き合ってみてください。頑張ってくださいね。応援しています。