今回のテーマは「社員が会社に定着するプロセスとは」です。
先日、社員が数年ごとに退職してしまうとのご相談をいただきました。
「うちの会社では、3年スパンで社員が辞めたり、入れ替わったりします。私としては社員を大切にしているつもりなのですが、いろいろな理由で辞めていきます。ここまで続くと自分に何か問題があるのではないかと不安に思ってきました。社員の離職について何か気を付けておくポイントがあれば教えてください」
せっかく採用して3年間育ててきた社員が辞める…採用コストや教育コストはもちろん、そういったことが続くと気持ちの面でも苦しいですよね。
弊社もこの問題は社員が辞める度に痛感していました。そこで社員が辞めてしまう原因を分析した結果、入社後すぐに活躍することを求める経営者と、活躍するまでに時間がかかる社員とのギャップが見えてきたのです。
このギャップを正しく認識しない限り、社員が定着するのは難しいでしょう。そこで今回は、経営者が社員定着のために知るべき二つの前提と、社員が会社に定着するまでにどのような感情変化のプロセスを辿るのかについてご紹介していきます。順番に見ていきましょう。
まず前提の一つ目として、経営者が忘れてはいけないのは社員が育つまでには時間がかかるという事実です。人が育つのに3年、一人前になるまでに5年はかかるのではないでしょうか。
入社して半年程度の社員に「なんでできないんだ!」と怒りたくなる気持ちも理解できますが、経験が浅いのだからある意味仕方ないとも言えます。逆に怒られ続けている社員はモチベーションが下がり、離職に繋がる可能性も高まります。
社員を定着させようと思うと、社員が活躍するのには時間がかかる、つまり『社員一人にかける投資額を増やす覚悟』が経営者には求められるのです。
前提の二つ目は、社員の強みを見つけて仕事を任せる必要があるということです。私の経験上、社員は苦手なことを任せるとすぐに辞めてしまいます。強みを発揮させてあげたほうが、成果にもつながりやすく、会社としてのリターンも大きいです。
社員の強みを伸ばすと「その仕事は○○さんのポジションだよね」という風に、会社に居場所ができます。強みを伸ばし、周囲に認められながら働くスタッフは他の能力も自然と引きあがるものです。
もちろん、苦手なことでも果敢に挑戦する若手であって欲しいというのが経営者の本音かと思いますが、まずは強みから伸ばし仕事に慣れてもらうというのも、社員の定着という面では大事な視点ではないでしょうか。
次に社員の視点で考えてみましょう。社員が本気で会社にコミットしたい、長く働きたいと感じるのは会社を好きになってからではないでしょうか。入社してすぐの社員は、新しい環境に適応したり仕事に追われたりで、会社が好きだと感じる余裕はほとんどありません。
そんな社員も、得意なことで仕事ができるようになると余裕が生まれ、徐々に自分だけでなく周囲に関心を持てるようになります。
周りに目を向けられるようになった社員は、概ね次のようなプロセスで会社に愛着を持ち始めます。
1)お客さんを好きになる
2)周りのスタッフを好きになる
3)仕事が好きになる
4)会社を好きになる
5)社長が好きになる
得意で仕事をしながら良いお客さんと出会ったり、信頼できる仲間に囲まれて安心して働いている社員はどんどん仕事が好きになっていきます。
そして仕事が好きになればそんな仕事ができる会社を好きになり、その会社を創っている社長のことも好きになるのだと思います。
多くの会社はこの「会社を好きになってもらう過程」を急いでしまっているように感じています。超一流ベンチャーで成長していて給料が高くて…という会社でなければ、入社後すぐに会社を好きになることは稀でしょう。
もしかしたら「給料を払っているのだから会社にコミットして当たり前だ!」とお考えになるかもしれません。私も同感ですし経営者としては当たり前の感情だと思います。
しかし、社員は指示すれば動いてくれるかもしれませんが、お金を払っているから会社を好きになってくれるわけではありません。だからこそ、経営者は社員が会社で活躍し、会社を好きになってもらえるような仕組みを設計していく必要があるのではないでしょうか。
社員が定着するためには、仕事や会社を徐々に好きになってもらうことが欠かせません。ぜひ、社員が少しずつ会社を好きになれるよう設計しながら、離職の少ない会社を創ってもらえたらと思います。
せっかく採用したのに数年スパンで社員が辞めてしまうのは経営者としては辛いですよね。社員を定着させるためには、経営者も長期的な視点で、社員が会社を好きになるようなプロセスを設計していくことが大切だと思います。
まずは社員が活躍するのには時間がかかることを受け入れ、強みを活かせるような仕事を任せながら社員の居場所をつくってあげてみてはいかがでしょうか。