今回のテーマは「ベテランより新入社員が優秀な場合の対処法」です。
医療系のコンサルティング会社を経営する方からご相談をいただきました。
「採用に力を入れて、ここ数年で従業員を7人程度採用しました。このまま加速をつけて成長していきたいのですが、成長にブレーキをかけているのがベテランの社員です。新入社員が前向きに仕事にチャレンジする中、そのチャレンジを止めさせるような動きがあります。どうしたらよいでしょうか」
新入社員が前向きにチャレンジする中、ベテラン社員がそのチャレンジを止めてしまう。それは悩ましい問題ですね。
実際、私のクライアントを見ていても会社が成長するにつれて同様の問題が起こるケースが少なくないようです。しかし、せっかく長く働いてくれているベテラン社員にこそ協力してほしいという思いもあるのではないでしょうか。
そこで今回は、ベテラン社員が新入社員のチャレンジを止めてしまう理由と対処法についてご紹介していきます。
そもそもなぜ、ベテラン社員は新入社員のチャレンジを止めてしまうのでしょうか。
考えられる理由としては、優秀な新入社員が入ってきたことによる焦りがあるのではないかと思います。
会社が成長してくると、安定感や待遇面が改善されますから、学歴が優れていたり、要領の良い優秀な若手が採用しやすくなります。さらに教育体制も以前より整備されているので、当然新入社員の成長速度は早くなります。
そうした新入社員を見ると、ベテラン社員としては自分の立場や居場所がなくならないかと多少なりとも気にしてしまうものです。
経営者としては、「新入社員と比べるのではなく自分の成長と向き合って欲しい」「若手の挑戦を止めるのではなくベテランとして背中を見せて欲しい」という思いもあるかもしれません。
しかし、創業初期の頃は教育体制が整備されていないため、社員教育は現場でとにかく仕事を覚えるというのが大半だったのではないでしょうか。
そのため、その時期に入社したベテラン社員たちは、「正しく成長する方法がわからない」「丁寧に教育を受けられる若手が羨ましい」と感じているケースが少なくないのです。そしてこれは経営者の責任でもあると私は考えています。
そこで弊社で実践してきたのは、従業員が数十人くらいの規模の時から、人事評価制度を導入するということです。
私が人事評価制度の導入に積極的だった理由は、昔からいる社員を成長させないと“会社の成長に社員の成長が追い付かない”ことを何度も経験してきたからです。
なので、ご相談者様の会社が10人前後の規模だとするならば、これから入社する社員とのレベル差がひらかないように、人が育つ人事評価制度を導入し、ベテラン社員が自分の強みを活かして成長と向き合える環境を整えることが大事だと思います。
ところが、いざこうした制度を導入しようとすると嫌がるのもベテラン社員です。
ベテラン社員が人事評価制度を嫌がるのは、「自分の頑張りが認められなくなったらどうしよう」「もし悪い評価だったら…」という不安があるからでしょう。そのため、経営者に求められるのは、ベテラン社員には最大限の尊敬とリスペクトをすることです。
「あなたがいたからこの会社がある、これからも一緒に会社を創って欲しい」
このように伝え、信頼関係を構築していくことが大切です。そしてこれは経営者が思っているよりも時間をかけながら真剣に向き合っていく必要があるでしょう。
加えて、ベテラン社員が得意を活かして活躍できる場所を、意識的に用意することをオススメします。働いている社員たちは、全員が役職についたり、偉くなりたいわけではありません。しかし、「活躍したい」「居場所が欲しい」これは共通の思いのはずです。
だからこそ、ベテラン社員の得意を見つけ活躍できる場をつくり、「ここはあの人のポジションだね」とみんなで共通の認識にすることで、ベテラン社員をリスペクトすることができるのです。
中小企業ではトップの発言に影響力がありますから、まずは率先して経営者がベテラン社員を認め、居場所をつくってあげることが大切です。
今回ご質問いただいた内容は、会社でよく起こり得ることですし、今後もなくなることはないかもしれません。だからこそ、少ない人数の時から人事評価制度を導入し、入社年次に関わらず社員が成長する環境を整えてあげることが大切だと思います。
丁寧に社員のフォローアップ、活躍できる居場所を用意するといった取り組みは社員の定着にもつながります。こうした社員の成長を後押しする会社の姿勢を見れば、ベテラン社員も安心して自分の成長に向き合えるのではないでしょうか。