今回は、書籍『会社の「偏差値」強くて愛される会社になるための100の指標』を中小企業に活かす方法についてご紹介します。
著者の坂本光司さんは、「人を大切にする経営」にまつわる研究・活動を展開している経営学の権威です。これまでに8000社を超える企業に訪問・アドバイスを行っているほか、「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」審査委員長などの公務も多数兼任されています。
本書では、会社の偏差値を決める“モノサシ”を「ステークホルダー(会社に関わるすべての人々)への幸福提供力」と定義。そして、ステークホルダーの幸せを実現するための経営指標を通じて、経営者が果たすべき役割を示しています。
今回は、本書の中から中小企業にとって特に重要な指標をピックアップし、簡単な解説を添えながらご紹介します。
本書では、社員を「経営者がもっとも重視すべき人」とし、社員とその家族の幸福を守るための次のような経営指標を示しています。
リストラや自主退職の催促は、社員の会社に対する信頼を壊し、会社の価値を大きく下げる行為です。また、社員の生活と幸福を考えるならば、給与や賞与の水準は努めて高く保たなければなりません。
そして、社員との間に健全な信頼関係を築くためには、経営情報を隠さず伝えることも大切です。
必要な情報をしっかり共有しなければ、社員のモチベーションや課題解決力を引き出すことはできません。情報を開示して経営の透明性を保つことは、組織力を高めることにつながるのです。
「社外社員」とは、仕入先や外注先といった取引先を指す本書独自の呼称です。そして本書には、社外社員に関する以下のような経営指標が示されています。
取引先は単なるツールではなく、自社とともに顧客満足を支えてくれる大切な仲間です。取引先と健全なパートナーシップを築くためには、彼らを「社外の社員」と考え、責任と敬意をもって対応するべきだということですね。
企業の盛衰を決定づけるのは、いつの時代も顧客や社会にほかなりません。本書には、顧客や社会に支持され続ける会社になるための以下のような経営指標が示されています。
現在や将来の顧客について
社会について
経営者は、「会社のために社員や顧客がいる」のではなく、「顧客や、顧客に貢献してくれる社員のために会社がある」と考える必要があります。また、市場に新たな価値を提供し続けることは、経営のマンネリ化を防ぎ、会社のファンを増やし続けることにつながります。
そして、社会貢献活動に真摯に取り組むことは、企業としての責任を果たし、「人を大切にする経営」を体現することにほかなりません。目の前にいる顧客のニーズだけではなく、社会全体の要求にも応えることが、企業が将来にわたって成長し続けるための鍵となるのです。
経営状況が安定していなければ、ステークホルダーを幸せにすることはできません。本書には、盤石な経営を行うためのポイントとして、次のような指標が提示されています。
「いきすぎた競争を行わない」とは、社員間の過度な競争を煽ったり、価格競争やシェア争いに夢中になったりしないということです。また、資金の借入を低く抑えることは、リスクの少ない安全な経営を行うことに直結します。
そして、高すぎる売上・生産目標の追求や、倍々ゲームのような急成長・急拡大は、社員を疲弊させ、組織力を毀損する恐れがあります。長く安定した経営を行うためには、急激な変化や全力疾走を避け、常に一定の余裕を保ちながら歩み続けることが大切なのです。
会社の偏差値は、年商や利益率で決まるわけではありません。本当にすぐれた会社とは、社員や取引先、顧客や社会の人々に末永く愛され続ける会社のこと。そして、これを実現するためには、著者の坂本さんが提唱するような「人を大切にする経営」を追求する必要があるのです。
今回ご紹介した以外にも、本書には「人を大切にする経営」に役立つたくさんのヒントが示されています。ぜひ、本書をご覧になり、貴社の価値をさらに高めていくための一助としていただければと思います。