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2026/04/23

適切なマネジメントは、適切な線引きから

どこまで社員の相談をきくべき?1on1の目的

先日、経営者の方からこんなご相談をいただきました。

「かれこれ1年ほど1on1を継続しています。その1on1で、あるスタッフからプライベートな相談を持ち掛けられました。これまでの人生に関する、かなり根深く重い内容の相談です。それが原因で仕事にも打ち込めないと打ち明けられました。」

「私の方からは、そのスタッフに励ましの言葉を投げかけたものの、果たしてこれで良かったのだろうかと疑問です。相談してくれること自体は嬉しいですが…経営者はどこまで社員の相談にのるべきなのでしょうか」

社員が深く自己開示できるほどの信頼関係を築けているのは、とても素晴らしいことです。ご相談者様が1on1を通じて、その社員の方と誠実に向き合ってこられたからこそではないでしょうか。

しかし結論から言えば、こうした領域に経営者が深く入り込むのはおすすめできません。そこで今回は、社員と向き合う際の「距離感」や「線の引き方」について考えてみましょう。

経営者ができること、できないこと

社員が1on1でプライベートの深い悩みを話してくれるのは、それだけ信頼を寄せられている証です。だからこそ、問題を丁寧に扱い、真摯に向き合う姿勢は欠かせません。

一方で、今回のような「人生に関わるほど重い内容の相談」は、経営者が背負える範疇を超えている可能性があります。傾聴や励ましだけでは解決できない、長期的で複雑な問題であることが多いからです。

このような場合は、経営者が「できること」と「そうでないこと」を明確に切り分け、線引きした上で向き合うことが重要です。

例えば、もし私が社員から同様の相談を受けたなら、カウンセリングなど専門家の支援につながることを提案します。なぜなら、私には経営の専門知識はあっても心理支援の知識はないため。人生に関わるほど深刻な悩みに対する直接の助言は、私に「できる」ことの範疇を超えているのです。

コミュニケーションの目的は?

そもそも、経営者にとって社員は家族でも友達でもなく、同じ目標を共に目指す仲間(ビジネスパートナー)です。コミュニケーションの目的も、親密になるためではなく「共に目指す目標を達成するため」。対処に迷う相談を受けた時には、この前提を見失わないことも大切です。

一見冷たく感じるかも知れませんが、これは社員と健全な関係を保つためには欠かせない視点です。

どんなに親しみや愛着を感じる社員でも、「できること」の枠を超えて介入すれば、いずれお互いに疲弊してしまいます。ビジネスパートナーとしての適切な距離感を保つことは、むしろ経営者として誠実な行動です。

もちろん、これは「社員の人となりには一切踏み込んではいけない」「プライベートの話をしてはいけない」といった意味ではありません。その人の人となりや強み・弱み、どのようなことにモチベーションを感じるかといった情報は、社員との信頼関係を築くためにも、成果を出すための環境づくりのためにも不可欠です。

肝要なのは、常に目的を意識して関わること。コミュニケーションの目的が明確であれば、社員との距離感もより健全に保てます。

本日の結論

1on1の目的は、社員の悩みを経営者が解決することではなく「社員が前向きに働き、成果を出すための支援をする」こと。経営者として対処できる範疇を超えた相談を受けた場合は「解決できる専門家や外部リソースを探す」方法をとるのも、マネジメント手腕の一つです。

どこに線を引くかの基準は、人によっても異なります。社員とのコミュニケーションは何のために必要なのか。その目的を果たすために、自分は何ができ、何ができないのか。この考えを念頭に、経営者としての境界線を設定してみてください。

線を引くことは、社員を突き放すためではなく、責任を明確にした上で誠実に向き合うためにこそ必要です。勇気をもって適切な境界線を引くことが、社員と会社の両方を守る健全なマネジメントにつながります。

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