失恋と仕事の相関。「傷みを伴う環境変化」からの回復に必要なものは? | 中小企業の経営コンサルティングならブレインマークス
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2023.06.13

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失恋と仕事の相関。「傷みを伴う環境変化」からの回復に必要なものは?

株式会社ブレインマークス

変化は、時に痛みを伴う

今回のブログでは、職場の環境変化が社員にもたらす影響について考えます。

経営者(起業家)の多くは、人によって多少の差こそあれ、絶えず変化を求めて会社を良くしようという気性に富んでいます。一方で会社には、変化を歓迎しない人たちも確かに存在しているでしょう。その変化が喪失感を伴う場合はなおさらです。

さらに、今は「変化の時代」と言われるように、AIの出現や働き方改革の遂行など、経営を取り巻く環境が目まぐるしく変わっています。

こうした変化の波に飲まれてしまえば、生き残ることはできません。つまり、好むと好まざるとに関わらず、今は変化に対応しなければならない時代なのです。

では、喪失感を伴う変化が社員に訪れたとき、あるいはそうした変化を断行しなければならないとき、周囲はどのように対応すべきなのでしょうか。

この問いに向き合うことは、変化の時代にうまく対応していくことはもちろん、社員のメンタルヘルス対策を向上させていくことにも密接につながっています。

喪失感と時間の関係

では最初に質問です。あなたは失恋をしたことがあるでしょうか? 長い間生きていれば、失恋を経験している方も多いことと思います。

なぜこんな質問をしたかというと、喪失感を伴う変化を想定する際、失恋を例に考えるとわかりやすいからです。

失恋は紛れもなく「変化」です。しかも、恋人を失うのですから、喪失感を伴う変化です。ここで思い出してもらいたいのは、失恋から立ち直るまでにどのような経過をたどったか
ということです。

おそらく多くの人が、最初は失恋の現実を受け入れられなかったのではないでしょうか。

恋人との幸せだった時間を思い出し、過去と現在を行ったり来たり。頭では別れたことを理解していても、心がそれを受け入れられません。

そうした時間の経過があってこそ、ついに頭と心が合致する時がやってきます。ようやくここで新たな一歩を踏み出す準備ができるのです。

喪失感からの回復ステップとは

こうした心理的な痛みからの回復に要する時間について、米国コンサルタントのウィリアム・ブリッジスは、下図のように図式化しました。適切な対応によって、圧倒的に短い時間で痛みのレベルを低下させることができるといいます。

さらにウィリアム・ブリッジスは、人が痛みから立ち直る心理を以下の三段階に分けて説明しています。

①終結期
終結期とは、いわば「切り離す時」と言えます。失恋の例で言えば、過去は戻らないと区切りをつけた時期がそれに当たります。

②過渡期
過渡期とは、「古いものを完全に終わらせ、新しい行動パターンを見つけるための方向づけの時」です。先に進もうとの気持ちはあるものの、過去への執着がまだ残っているためにうまくいかない。それがこの時期です。

③新生期
新生期とは、文字通り「生まれ変わりの時」です。幸せな過去への執着が去り、変化を自分のものとして真に受け入れ、新たな一歩を踏み出す頭と心の準備ができた状態です。

痛みの大きさと時間の経過には個人差があるものの、人が喪失感を伴う変化を経験して回復に至るまでには、上記の三段階を経るのが一般的なようです。

さて、ここまでは喪失感を伴う変化を失恋で説明してきましたが、同様のことは仕事の場でも起こり得ます。配置転換や転勤、あるいは給与カット、周囲のリストラなどがそれに当たります。

そうした変化に遭遇した社員は、失恋後と同じような心の経過をたどるものです。それが仕事であれ失恋であれ、喪失感を伴う変化であることに変わりはないからです。

ただ、経営者としては、社員にいつまでも「過渡期」でいられては困ります。早急に「新生期」を迎えてバリバリ働いてほしいと思うのは、経営者の素直な感情でしょう。

新たな一歩を踏み出すために

しかし、ここでもやはり、自身の失恋の体験を思い出してもらいたいのです。

「過渡期」の初期において、いくら周囲から励まされたとしても、「新生期」に至るまでの心の動きをコントロールするのは自分でしかない。それが現実ですよね。

この時期に周囲から色々と言われるのは、当人にとってはありがた迷惑でしかないことが多いのです。

むしろ、そうした周囲の声が雑音となってしまい、「新生期」へのステップアップが遠のきかねません。

では、社員に「過渡期」を早く乗り切ってもらうためには何ができるのでしょうか。

この問いを考えるには、失恋後の過渡期に自分は何を求めていたかを思い出してみるのが有益です。

その時心に届いたのは、根拠のない励ましよりも、ただ自分の話を黙って聞いてくれる態度
ではなかったでしょうか。

周りの声が聞こえてくるのは、その後です。建設的なアドバイスや論理的な方向づけが奏功するのは、あくまで当人自身が変化を納得した後なのです。

喪失感を伴う変化に遭えば、誰しも「過渡期」を経ずして「新生期」には至れません。そのために大切なのは、本人の状態に合わせた適切な対応をすることです。

それを可能にするためには、人間が喪失感からどう回復していくか、その過程を知る必要があるでしょう。いつどんな対応をすべきかという知識は、当人が過度に不安定になることも防いでくれます。

この知識に基づいて生まれた仕組みは、社員のメンタルヘルス対策としても有効に機能するはずです。

(安東邦彦)

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