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2021.04.01

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「まとまり、異分子、まとまり……」の繰り返し。組織の活性化は背反性の認識から

安東 邦彦

活性を目指す組織のジレンマ

今回は、組織の活性化について考えてみたいと思います。

組織とは、言うまでもなく人の集まりです。なぜ人が集まるかというと、そうすることによって働きやすくしたり、目的を達成しやすくしたりするためです。

そのため、組織には必然のメカニズムとして異分子を排除する機能が働きます。もちろんそこには人の意思も働きますが、それも含めて組織活性のメカニズムと考えられています。

ところが皮肉なもので、働きやすさや目的達成の近道という組織の目的そのもののために、組織は徐々に活性を失っていくのです。

組織はその目的のために、似たような人間を集まることになります。となると、新たな発想や新たな刺激はどうしても乏しくなりがち。新たな挑戦も生まれづらい環境となります。

企業は、絶えず組織を鼓舞して、そこに属する人たちが再び生き生きと動き出すための方策を試み続けなければなりません。

そのヒントとなる具体例をご紹介します。

「One Panasonic」が生まれた背景

日本を代表する企業の一つ、パナソニック。この大企業では、若手有志が発端となって立ち上がった「One Panasonic」というコミュニティが活躍しています。

目的は「社内外で人脈を広げ、新規事業開発にも挑む」こと。まさに組織がもつジレンマを十分に認識したうえでの試みと言えるでしょう。

それでは、「One Panasonic」の中身はどんなものなのでしょうか。リクナビNEXTのホームページ内「グッド・アクション・アワード」に掲載されている内容を抜粋してみます。

上図について補足をします。きっかけとなった「風土の異なる3社の合併」というのは、パナソニック、パナソニック電工、三洋電機3社の合併を指します。

風土の違う3社が合併するということで、「各社の若手が集まり、新生パナソニックと同じベクトルに向けて歩みだすきっかけ」としたかったのだといいます。

これは前述の働きやすさや目的達成の近道を企図したものです。

「異分子注入」のために社外からゲストを招聘

次に、「取り組みを運用する秘訣」とされる「若手だけにとどまらず、ミドル、経営層までを巻き込んで運営していること」とはどんなものでしょう?

最もわかりやすいのが、上記の3社合併で生まれた新生パナソニックがどういう方向に進むのか、社長自らの言葉で語って欲しいとの要望メールに応えて、大坪文雄社長(当時)が「One Panasonic」に参加したことです。

若手だけで運営されていた「One Panasonic」に経営トップが参加し、さらには明確に方針が提示されたことで、組織の一体感を高める助けとなったのは間違いありません。

このことをきっかけに「One Panasonic」は勢いを得て、定期的に先輩社員のみならず経営幹部が参加しての「全体交流会」を開くようになります。

ときには社外から著名人をゲストに招き、一方的に話を聞くのではなく、互いの意見を交換できる場となっていったといいます。

ここでの「One Panasonic」は興味深い進化。それは、社外のゲストを招いて交流している点です。

会社を働きやすくし、目的達成の近道だけなら一体感を醸成するだけで良いのでしょうが、社外からのゲストの招聘が意味するところは、異分子の注入に他なりません。

3社が合併して新会社ができるというのは、新たな組織ができるということです。そうしたときに必要なのは、組織を組織として機能させることです。社外ゲストの招聘は、一体感だけを求めることに物足りなさを感じていることの現れです。

堂々巡りを諦めない組織づくり

「One Panasonic」がテーマ別の分科会を積極的に開催しているという事実はその証左です。

その一つである「共創ベース」は、「所属部署での実現が難しい商品開発アイデアのブラッシュアップを考える分科会」だそうです。単一部署ではリソースに限界がある場合でも、

部門横断の交流や社外人脈によって糸口が見つかる場合があるといいます。

根底にあるのは、働きやすさを求めるだけでは得られない、「異物を互いに受け入れることによって生まれる何か」を手に入れたいという考えです。

また、パナソニックという大きな組織の中に生まれた「One Panasonic」という小さな組織が、一体感だけでなく、異分子の注入を求めるようになったことが、まとまりだけでは活性化されない、組織の性質を表しているのではないでしょうか。

それにしても面白いのが、「One Panasonic」というネーミングです。これは3社合併の際に、風土の違いを超えて、今こそパナソニックは一つにならなければならないとの思いから来ていると推察できます。

当初はそのようにして発足した組織であっても、異分子を受け入れることを選んだ経緯は前述の通りです。

しかしながら、そうした試みも、組織がまとまっていることが土台にあってこそです。

働きやすさを求めて組織が形づくられても、それだけでは早晩行き詰まります。そのために異分子の注入が要請されますが、土台には組織の一体感は必要不可欠です。

何やら堂々巡りのようですが、これこそが組織が本来もっている背反性なのです。このことを十分に認識しながら、組織の活性化に励みたいものです。

(安東邦彦)

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