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2020.12.24

コンサルティング

「損益分岐点」の視点で考える企業理念の浸透 〜地道な積み重ねが、ある一点から急激に力を発揮する

安東 邦彦

「不可欠だからこそ悩ましい」企業理念との苦闘

今回は、改めて企業理念の浸透について考えたいと思います。

近年では多くの会社が企業理念を掲げています。理念の存在が、会社を運営する上で様々な好影響をもたらしてくれることを知っているからです。

例えば、企業理念は会社の進むべき方向性を明確に示し、社内の一体感を醸成してくれます。

また、企業理念は「自分たちがどんな会社で、何をしようとしているのか」を内外に提示します。それは赤裸々な自己紹介であり、会社の土台ともなります。

ところが、企業理念を内外に浸透させることの重要性は認識してはいても、その具体的な方法について考えあぐねている企業が少なくありません。

「やってはいるけれど成果は頭打ち」「どこまでやればいいかわからない」という悩みもよく聞かれます。企業運営に不可欠なものであるだけに、悩みは深くなるということでしょう。

企業理念を内外に浸透させるための施策については、すでに多くの議論がなされています。しかし、その一歩先の悩みである「どこまでやればいいのか」についてはまだ不十分だと感じています。

理念が浸透しないのは、旗振り役になり切れないから

まずは、企業理念の浸透を妨げている要因を確認しておきたいと思います。

下図はHR総合調査研究所が行なった「企業理念浸透に関するアンケート調査」からの引用です。理念の浸透が進んでいないとする企業に阻害要因を聞いています。

上図によると、「経営層が旗振り役になれていない」が過半数を占めてトップに挙げられています。

日々、忙しい経営者が理念浸透の旗振り役として、行動し続けることが大変なことはよくわかります。

しかし、一番初めに理念を浸透させるときに、この役割を一介の社員に任せることが難しいのも事実です。

そういった現状を踏まえても、まずは「経営層」が浸透の旗振り役を行なっていく必要があるのです。

企業理念浸透に「損益分岐点の視点」を導入してみる

それでは次に、企業理念の浸透について別の視点から見ていきましょう。「どこまでやればいいのか?」という疑問に答えるためのヒントになるはずです。

経営における大切な指標のひとつに「損益分岐点」があります。費用を収益でカバーでき、ちょうど損益がゼロになる点を指すのはご存じの通りです。

その一般的なイメージは下図のようになるでしょう。

一般的な損益分岐点のイメージ(上図)では、時間の経過とともに売上高が上がっていき、ある時点で費用を収益でカバーできるようになり(損益分岐点)、それ以降は利益を計上できるようになります。

ここで試みたいのが、「企業理念の浸透を損益分岐点の考え方で見てみる」ことです。

つまり、どの一点から理念は効果的に浸透し始めるのか、ということです。それは一般的な損益分岐点のイメージとは異なります。

企業理念に関する損益分岐点のイメージは下図のようになるのではないでしょうか。

上図の意味するところは、企業理念というものは内外に浸透するのに時間がかかる分、ある一点を超えると一気に浸透し始め、理念の浸透による便益が急激にもたらされる、ということです。

10年にわたる「地道な清掃活動」がもたらしたもの

写真家・作家の星野道夫は著書『森と氷河と鯨』の中で、アラスカの港町シトカで出会った不思議な男ボブ・サムについて書いています。

彼は荒れた生活の末に故郷のシトカに戻り、誰に頼まれるでもなく足の踏み場のないほど荒れ果てたロシア人墓地(それ以前はアラスカ先住民の神聖な墓地)の掃除を始めるのです。

ボブの10年にわたる地道な行動によって、墓地はかつての神聖さを取り戻します。

星野は「毎日たった一人で墓場を掃除することで癒されていったボブの存在が、実は町の人々の心を癒してきたのではないか」と書いています。

町の人々は、誰もがボブのことを笑顔で語るそうです。

企業理念の浸透を考える際にも、示唆に富む挿話だと思いませんか?

(安東邦彦)

 

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