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2019.10.24

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なぜあの会社は「変な採用試験」をするのか

安東 邦彦

 

 

採用問題の原因は企業側にも

今回は、企業にとって不可欠な「採用活動」について考えます。

人手不足が本格化し、採用は今や中小企業にとって死活問題となりつつあります。
「採用基準を満たす候補者が集まらない」「そもそも応募がない」
「採用活動に時間がかかる」など、悩みはさまざまでしょう。

さらに、採用後も問題は続きます。
せっかく時間と労力とお金をかけて採用したのに、
期待していたような人材ではなかったり、あるいは入社後すぐに辞めてしまったり……。

ただ、これは採用される側ばかりの責任ではありません。
もしかすると、企業側の採用活動、採用方法が間違っているのかもしれません。

「自社にふさわしい採用活動とは?」

そのヒントを得るため、
実際に様々な組織が「自分たちに合った採用活動」を見つけていった過程を
ご紹介したいと思います。

中には、「そんな採用プロセスがあるのか!?」と驚くような
特殊な事例もありますので、楽しみにお読みください。

「演奏技術に秀でた者を選ぶ」という一つの目的のために

世界的に知られるボストン交響楽団は、実にユニークな採用方法を取っています。
何しろ面接官と応募者が顔も合わさず、言葉すら交わさないのです。

このやり方は「ブラインド・オーディション」と呼ばれます。

今ではさまざまな楽団で取り入れられていますが、
ボストン交響楽団は1952年に初めてこの方法を実行しています。

背景には、当時のオーケストラで活躍する演奏家がほとんど男性だったことがあります。
男性のほうが女性よりも、音楽的才能が豊かだと信じられていたのです。

しかし、第二次世界大戦に出征するメンバーが増えたため、
男性ばかりにこだわってはいられなくなりました。
それでも女性の起用に反対する人々を納得させるために考案されたのが、
ブラインド・オーディションだったわけです。

顔を見ない、声を聞かない。
試験会場には厚いカーペットを敷いて靴音を消し、
「ヒールを履いているかどうか」さえもわからない。

これらすべてが「演奏技術に秀でた者を選ぶ」という一つの目的のために
行なわれているのです。

それ以外の要素(性別や容姿など)を徹底的に排除したことで、
ボストン交響楽団は自分たちにふさわしい採用手段を見つけたと言えるでしょう。

ちなみに、1950年代にはほとんどが男性だったボストン交響楽団ですが、
現在は男性が66人に対し、女性が31人にまでなりました。

美人か、そうでないかで評価が変わる?

とはいえ、中小企業でブラインド・オーディションを取り入れられるかというと、
それはなかなか難しいでしょう。
多くの場合、表情や話し方も重要な選考基準だからです。

ただ、自分は「余計な情報で選考を左右されまい」と思っていたとしても、
人間同士が向き合えばどうしても偏りが生じることを企業は認識しておくべきです。

1977年、ミネソタ大学のマーク・スナイダー教授によってある実験が行なわれました。

ある男性グループに対して、外見が魅力的な女性と、そうではない女性の写真の
どちらか一方を見せます。
その後、男性はその女性と電話で10分間話します。
電話のあとに男性は相手の印象を評価するというものです。

結果は予想された通りのものでした。

外見が魅力的な女性と話したと思っている男性のほうが、そうでない男性よりも、
相手に「親しみやすい」「社交的」などの高評価を与えたのです。

しかし実は、電話で話した相手は写真の女性とはまったく別人で、
この実験のために無作為に選ばれた女性でした。
つまり、人は相手の容姿次第で、それとはまったく別の
パーソナリティに対する印象にも影響を与えてしまうということがわかったのです。

この実験にはさらに続きがあります。

会話の様子を録音したテープを別のグループに聴かせて、
同じように女性への印象を評価させました。
このとき、彼らに女性の写真は見せていません。

ところが結果は、先の男性グループと同じだったのです。
美人だと思って話した会話の録音を聴いた人は、その女性に対して高評価を与えました。

スナイダー教授は、美人と思い込んだ男性の態度に原因があると説明しています。
彼らが親しげに話しかけたことで、相手の女性はリラックスし、
前向きな回答をすることができたというわけです。

「変な採用試験」をする会社

面接官として先入観なしに面接に臨んでいると本人は思っていても、
選考基準以外の情報によって惑わされる可能性があることを理解してもらえたと思います。

だからこそ、自社が必要としているスキルや個性を明確にして応募者を見極めるために、
ふさわしい方法を取る必要があるのです。

例えば情報機器販売のスターティア株式会社は、採用試験に「麻雀」を取り入れました。

麻雀を打つと性格が出ると言われます。
また、麻雀には刻一刻と変わる状況に対応する頭の回転の速さ、勝負所を感じる感性、
運をコントロールする技術などが必要です。

これらをスターティアは社員に求め、その選考のためには麻雀が最適と考えたのでしょう。

一方で人材派遣会社の株式会社ビースタイルは、採用試験での面接を廃止しました。
面接では、「入社後活躍するかどうか」「互いの相性は良いか」といったことを
見抜けないとの結論に行き着いたからだそうです。

面接の代わりに、応募者の人となりがわかるように、
ゲームやディスカッション、プレゼンテーションなどを実施しています。
あるいはご飯を食べながら腹を割って話したり、
試しにちょっと働いてもらったりといった取り組みをしているそうです。

このように、「変わった採用試験」を行なっている企業は、他にもたくさんあります。

ただし、「変わったことをすること」自体が目的ではありません。
自社が欲しい人材を獲得する方法を真剣に考えた結果、
世間的には「変わっている」と見られるのです。

自社に本当に必要な採用手法とは――?
それを見つけるには、既存の枠組みにとらわれず、柔軟に考えることが必要なのでしょう


(安東邦彦)

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